従業員のなかで、「何をやっても無駄だ」「頑張っても意味がない」というような雰囲気が流れることはありますか?
その雰囲気の正体こそが、学習性無力感と呼ばれるものです。
一般的には、何かしらのストレスがかかれば抵抗したり回避したりしようとするでしょうが、いくら行動を起こしてもストレスから逃れられないと学習すると、無気力な状態に陥ってしまいます。
「どうせ何をやっても無駄だ」「頑張っても意味がない」という気持ちになり、実際にはストレスから逃れられるチャンスが訪れたとしても、現状維持の状況に甘んじてしまいます。
学習性無力感がひどくなると、うつ病などの病気になる可能性もあります。
ビジネスシーンにおいて学習性無力感に陥るよくあるパターンとしては、周囲の人から繰り返し否定をされるケースです。
上司によく怒られたり同僚によく注意されたりすることが続くと、学習性無力感に陥る可能性があります。
単発的な叱咤激励であればむしろ意欲向上につながることもあるかもしれませんが、日常的にまたは繰り返し否定をされることが続くと、「自分は何をやってもダメだ」「どうせまた失敗する」といったような学習性無力感の症状が出てしまいます。
上司や同僚に注意されることは自分が成長するうえで必要だと捉えられるような人は、学習性無力感に陥りにくいといえるでしょう。
学習性無力感に陥っている人が周囲に多数いる場合、本人が否定され続けているわけではなくてもその無力感が伝染することによって学習性無力感に陥ってしまうことがあります。
それでは、学習性無力感を感じている従業員には、どのように接すればよいのでしょうか?
ゆとり教育では「ほめて育てる」という教育方針が採用されていたと聞いたことがあります。
以前、ある営業担当に、「来週までに10社に営業の電話をしなさい」と指示したことがあります。
翌週、2社しか電話をしていなかったので、「なぜか?」と問い質しました。
「残りの8社はスポット案件ですから、電話をしても無駄です」と答えましたので、当然、「こら!🤬」と叱りました。
翌日、別の女性が「叱らないで下さい。まずは2社に電話をしたことをほめてあげてください」と詰問されました。
学習性無力感に陥っている従業員には、まずほめることが大事なのでしょうか?
そうとは思えません。オロナミンCみたいに、一時的には元気っぽくなりますが、根本的な解決にはなりません。
学習性無力感を提唱したマーティン・セリグマン博士は、後にポジティブ心理学をスタートさせました。